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鋳造ジャーナル10月号掲載記事

ベテランの技から組織の技へ

鋳物工場のあらゆる場所に「ベテラン」の方がおられ日々の生産が行われております。
その状況を詳しく見ますと
型倉庫には「倉番」さんがおられます。
  この方の頭の中にはあらゆる「型」の場所・損耗具合までが詰め込まれ、即座に型準備と型の保管補修がなされ、他の人では全く手の出ない状況が出来ています。
顧客からの納期の問い合わせには「日程屋」さんがおられます。
  日程のやりくりは全てこの方の紙と鉛筆で行われ、顧客からの納期催促の電話があれば、「日程屋」さんを呼びに走り回るという状態で、他の人では答えられない状況があります。
・経理には「番頭」さんがおられます。
   お金のやりくりはこの方が一手に切り回しをされ、社長といえども全く手の出ない状況があります。
・造型には「型込屋」さんがおられます。
   多種の品目の造型条件等を一手に取り仕切られ、この人が休まれればラインストップにもなりかねないといった状況があります。
・出荷には顧客先の品物を判別する「ベテラン」さんがおられます。
   その方のノートには膨大な外観スケッチが描かれ、この方なしでは正確な出荷が出来ない状況があります。
等々・・・・・・・
今までの製造現場はこれらの「ベテラン」さんの力で生産が維持できていましたが、昨今の経営環境は
・ ベテランの退職
・ 終身雇用の崩壊
・ 未熟練工の増加
・ 顧客要求の・多種少量化・短納期化への即応
等が押し寄せ「ベテラン」さんに頼れる状況ではなくなってきています。
この事例のような「ベテラン」さんしか出来ないということはどういう状況なのでしょうか?
例えば先ほどの「倉番」さんの例をとれば
・ どの場所に何があるのか?
・ 型の使用回数は? 損耗チェックのポイントは?
・ 型の材質は?材質毎の限界使用数は?
・ 製品の形状精度は? 限界使用数への補正は?
・ 過去の補修履歴は?
・ 製作先は?価格は?
・ 使用回数から限界数をオーバーしているものは?
等のことを「倉番」さんの頭の中から引き出すことができれば、他の人でも「倉番」が出来るのではないでしょうか?
  又「日程屋」さんの例をとれば
・ ライン別・材質別・の受注重量は?
・ 造型条件・溶解条件(組合わせ・注湯条件等)は?
・ 日付割付した場合の品名・重量は?
・ オーバーフローの重量は? 先の見通しは?
・ 納期の変更・ライン故障の場合は?
等のことを「日程屋」さんの紙と鉛筆の中から引き出すことができれば、他の人でも「日程屋」さんが出来るのではないでしょうか?

今から数年前に某鋳物メーカーより、近じか「日程と経理のベテラン2名が退職するが、この方がいなくなれば、工場の円滑な創業も難しくなり、途方にくれている」という切なる相談を持ちかけられました。
「なにかよい支援方法がないものか」をターゲットに某鋳物メーカーと共同で鋳物現場のIT化に取り組んでいきました。
・.ベテランの仕事のノウハウを一つ一つメモ書きしパソコンに移し機能チェックをする
・最初から欲張らずに、先ず一番困られているところから着手し、順次拡大していく
・ソフト化した部分から関連データー(情報)をこつこつ入力する(あせらず淡々と)
これらを続けて3年 受注・納品から造型・溶解・出荷・検収・請求・資金繰りといった基幹系システムが順次稼動してベテランの欠員も補充なしでやりこなすことが出来るようになりました。
又、これら一つ一つの仕事も複数の人が対応可能となり間接部門の生産性の向上と多能工化が実現されました。
その後「パソコンの大幅な価格ダウンと機能の拡大」に合わせ、より高度な使用方法の開発に入り、図のような[ERP(統合型業務管理)システム]の完成に至りました。
現在のシステムは計24台のパソコンで構成されております(別地機械工場も一体管理)
事務所はもちろん溶解、造型、砂処理など製造の各部署に「LANで結ばれたパソコン」が置かれ、造型日程は二週間先まで計画され、それに応じて各部署のやるべき仕事が確認できる状況です。
又取引先(受注・発注)とのネット取引が拡大し受注したデータを即座に仕入先に展開できる状況です。
特に昨今は「見える化」と「変化点管理」に重点が置かれ、
・顧客からのクレーム情報・指示書・各種ドキュメントの一体管理と表示
・溶解条件・注湯条件・客先品質等の関連分析とその維持
に重点が移っています
某社社長の言葉をかりれば、「ベテランの技から組織の技」に切り替わってきた状況となってきました。

試行錯誤を繰り返して完成したこのシステムを標準化し「製造業向けの市販パッケージソフト」としました。
現在、機械業も含めて十数社の工場で使って頂き、更なる改善が加わり磨かれたソフトになってきております。
最新のパッケージソフトの特徴は
@ 他のパッケージにはない鋳造業のノウハウが盛り込まれています。(機械工場との連動も可能)
A 鋳造業の業務全体を段階的にコンピュータ化が出来るよう「機能分割方式」を採用しています
B 工場内の主要な場所で必要な生産情報が利用できます。(条件しだいで別地の工場でもLAN組込可)
D 取引先のIT化に伴う ネット受注/ネット発注等への対応が可能です
E 造型/注湯/材質/外観の検査データの一元化 及び 現物写真・標準類の管理と表示が出来ます
F 使用されるお客様の実情に合わせたカスタマイズが可能です
システムを導入をする場合、最初から開発するとすれば膨大な工数と長い期間が費やされます。
既に開発済みのパッケージを、カスタマイズをしながらお客様の実情によくフィットさせて使用されることが、
これからIT化をされるポイントと思われます。
以上 最近の「鋳造業管理ソフト」の一例を簡単に紹介させていただきました。.
ありがとうございました。

参考資料1 鋳造業 ERPシステム(統合型業務管理システム)の概要
参考資料2 工程の注意点・注湯条件・写真等が「見える化」された現品票
参考資料3 鋳造品の仕様/工程及び現物写真が「見える化」されたマスター画面
参考資料4 型の使用回数と点検要否が「見える化」された型管理
参考資料5 測定項目A・B・Cの相関と「変化点管理」の事例



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